無菌室とクリーンルームの違いとは?目的、仕組み、設備、用途を解説

無菌室とクリーンルームの違いとは?目的、仕組み、設備、用途を解説

無菌室とクリーンルームの違いとは?目的、仕組み、設備、用途を解説

最近、無菌室のお問合せが増えてきています。コロナウィルス騒動を堺に、無菌室の需要が急増したことが原因のようです。

病院の無菌室(むきんしつ)とは、感染予防や治療を目的として、室内の環境を極めて清潔に保つことを目的とした特別な部屋のことです。この部屋では、細菌やウイルス、ほこり、カビなどの微生物の存在を最小限に抑えるために、非常に厳密な管理が行われます。

無菌室の施工をお考えの方で、クリーンルームとの違いがよくわからない、という方のために、虎ノ門病院分院の無菌室や数々のクリーンルームの施工に携わってきた経験に基づいて、無菌室の仕組みなどにも踏み込んだ両者の違いを説明します。


1. 用語の定義

  • 無菌室
    微生物(バクテリア、ウイルス、カビなど)が存在しない環境を目的とした部屋です。主に医療、製薬、バイオテクノロジー分野で使用されます。無菌状態を維持するため、殺菌・滅菌が重要なプロセスとなります。
  • クリーンルーム
    微粒子や浮遊塵を制御することを目的とした部屋です。主に電子産業、半導体製造、宇宙開発など、粒子汚染を排除する必要がある環境で使用されます。清浄度はISO規格(ISO 14644-1)やJIS規格に基づいて測定されます。
無菌室とクリーンルームの違いとは?目的、仕組み、設備、用途を解説

2. 汚染制御の対象(目的)

  • 無菌室
    主に微生物(菌やウイルスなどの生物由来の汚染物)を対象とします。微粒子も排除しますが、目的は微生物汚染の防止です。
  • クリーンルーム
    主に微粒子や粉塵、その他の浮遊物(非生物由来の汚染物)を対象とします。一部の用途では、微生物の制御も含む場合があります。

3. 清浄度基準

  • 無菌室
    清浄度だけでなく、微生物の存在や生存可能性も規制されます。例えば、製薬業界では**GMP(Good Manufacturing Practice)**に基づいた基準が適用されます。
  • クリーンルーム
    主にISO 14644-1による微粒子数の基準(ISOクラス1〜9)が適用されます。無菌室に比べて、微生物の有無はそれほど厳しく規制されない場合があります。

4. 設備とプロセス(仕組み・設備)

  • 無菌室
    • 滅菌装置(例:オートクレーブ、紫外線殺菌装置など)が設置されます。
    • 使用する物品や人員の完全な滅菌・消毒が求められます。
    • 空調設備はHEPAフィルターが標準的で、さらに環境内の微生物レベルを管理する仕組みがあります。
  • クリーンルーム
    • 粒子数の制御が主目的で、空調システムやHEPAフィルターが重要な役割を果たします。
    • 微生物の制御は用途次第で、必須ではありません。
    • 人や物品の入室プロセス(エアシャワーなど)は、清浄度のクラスによって異なります。

5. 主な使用分野(用途)

  • 無菌室
    • 医薬品製造
    • 病院(手術室、集中治療室)
    • バイオテクノロジー(細胞培養、ワクチン開発など)
    • 食品産業(無菌包装)
  • クリーンルーム
    • 半導体製造
    • 電子部品や光学製品の製造
    • 宇宙開発(衛星組み立てなど)
    • ナノテクノロジー

6. 共通点

  • 両方とも空気清浄システム(HEPAフィルターなど)を使用しており、外部からの汚染を防ぐ設計になっています。
  • 作業員の衣服(無塵衣など)や入室手順に注意が必要です。

まとめ

  • 無菌室は微生物汚染を防ぐことに特化しており、医療や製薬の分野で使用されることが多いです。
  • クリーンルームは微粒子汚染の防止を目的とし、電子産業や精密工学分野で多く使用されます。

用途や目的に応じて、どちらが適しているかを選択する必要があります。

以下は、無菌室とクリーンルームの違いを表形式でまとめたものです:

項目無菌室クリーンルーム
目的微生物(菌、ウイルス)の汚染防止微粒子や浮遊塵の排除
汚染制御の対象主に微生物(生物由来の汚染物)主に微粒子や塵埃(非生物由来の汚染物)
清浄度基準微粒子数+微生物の存在や生存可能性を管理ISO 14644-1に基づく微粒子数の管理
主な基準・規格GMP(Good Manufacturing Practice)などISO 14644-1(クラス1〜9)
空気清浄装置HEPAフィルター+微生物制御システムHEPAフィルター(またはULPAフィルター)
使用される分野医療、製薬、バイオテクノロジー、食品産業半導体、電子産業、宇宙産業、精密機械、光学製品
滅菌装置の有無必須(オートクレーブ、紫外線殺菌装置など)必須ではない(用途による)
入室管理微生物持ち込み防止のため、滅菌・消毒が徹底される人や物品の持ち込み時の微粒子制御
清掃・管理方法滅菌や消毒が重視される微粒子や塵埃の除去が主な目的
主な使用例注射剤製造、細胞培養、ワクチン開発、手術室、食品無菌包装半導体製造、電子部品組立、人工衛星製造、ナノテクノロジー製品

この表は、無菌室とクリーンルームの違いを視覚的に理解しやすくするための比較です。それぞれの施設は目的や基準に基づいて設計されるため、用途に応じた選択が重要です。

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